カテゴリ:ツキジデス:『歴史』読解( 9 )

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040717-00000507-jij-int
中国軍、「台湾布陣」強化=海空軍中将、副総参謀長に

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040717-00000008-san-int
中国軍事演習始まる 改良型弾道ミサイル試射へ 米軍牽制が狙い

 海軍国になるには、自国を島国のように見なすことが大切な要素だと思います。アテナイのように実際には陸続きの場所にあっても、極力自国を島国のように扱うことが、自国の資源を海軍に使うときの大切な態度となります。

 海軍や空軍のいる領域は、人間が本来生活の場としていないために、そこに乗り出すには相当の冒険心や進取の気質が必要となります。ツキジデスの『歴史』では以下のような文章があります。

「。。。ギリシアの国運が艦船に依存していたことが明白となったが、この結果に寄与した最も重要なもの三つはわれわれ(アテナイ)が提供したのである。・・・最も多数の軍船と、最も明敏な指揮者(テミストクレス)と、最も大胆な熱意・・・」(第1巻74 アテナイ使節の反対演説)

 中国はこの3つの要素をどれだけ満たしているだろうか?アメリカのほうがアテナイに近い国のような気がします。

 はたして日本は?
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by Naotaka_Uzawa | 2004-07-17 23:04 | ツキジデス:『歴史』読解

国際関係とは?

ニュース・評論

 『レパントの海戦』(塩野七生 著)を読みました。この中の最後の解説にこういう言葉がありました。

 「国家の安定と永続は、軍事力によるものばかりではない。他国がわれわれをどう思っているかの評価と、他国に対する毅然とした態度によることが多いものである。」(ヴェネツィアのバルバロ大使)

 以下、ツキジデスの『歴史』ではどのように書かれているか、参考になりそうな部分を挙げてみたいと思います。

①「軍事力」
  「正義は力の等しい者の間でこそ裁きができるのであって、強者は自らの力を行使し、弱者はそれに譲る、それが人の世の習いというものだ。」(五巻89)

②「われわれをどう思っているかの評価」
  「われわれは親切を受けてではなく、こちらから親切を実行して、友人を得る。恩恵を施す者の方が、施した好意を持ち続けて、相手からの感謝の念を保持しようとするがゆえに、ますます信頼される友となる。他方、恩義を受けた者の方は、親切を返す場合にも好意にはならず、当然の恩返しと見られることを知っているがゆえに、むしろ疎略になってしまうものである。」(二巻40 ペリクレスの追悼演説)

③「他国に対する毅然とした態度」
  「些細な問題こそ、諸君の決意を確証し試験する一切のものなのである。もしも諸君が彼らに譲歩すれば、この件で諸君は恐怖に駆られて屈服したのだと彼らは考え、直ちに別の更に大きい要求を諸君に突きつけてくるであろう。しかし諸君が断固として拒否すれば、むしろ対等の立場で諸君と交渉すべきであることを、彼らに明確に示してやることになろう。」(一巻140 ペリクレスの演説)

 

 現在の私たちから見ると、ツキジデスの『歴史』におけるアテナイの態度は非常に強気のものだと見ることが出来ます。それは結局、①軍事力において、アテナイが非常に優勢だったというところに基礎があるとおもいます。

 一方、『レパントの海戦』におけるヴェネツィアは、トルコに対して非常に苦しい立場でした。そして、この本の中では、地中海世界が世界史の表舞台から去り、ヴェネツィアの繁栄が終わりにさしかかった頃でもあると書いてあります。

 日本は、一国としては衰退していますが、日本周辺は経済的にこれからの地域に存在しています。多分、このヴェネツィアの状況と違った明るい要素だろうと思います。軍拡と共に戦争を避ける努力が必要だと思います。
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by Naotaka_Uzawa | 2004-07-12 14:19 | ツキジデス:『歴史』読解

オーストラリア

ニュース・評論

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040709-00000838-jij-int
米軍再編、15日から日米協議=沖縄海兵隊移転案など検討
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040709-00000013-san-int
米軍、豪州内の施設利用を拡大 沖縄海兵隊見直しに影響も

 オーストラリアというのは、位置的に非常に価値の高い場所にあります。ここから太平洋、インド洋に影響を与えることが出来るからです。

 ツキジデスの『歴史』においてクレタ島はあまり取り上げられませんが、ギリシアとエーゲ海におけるクレタ島とオーストラリアの価値は似たものがあると思います。

 『歴史』から受ける印象は、
①主戦場から離れているので、航行の安全のためこの島周辺を利用して移動した。
②非常に小規模だが、アテナイ側に立ち若干の兵士を参加させた。
③寄港地としても利用されている。

 今回の米軍の再構成の最も重要なポイントは、予想される戦闘地点への迅速な移動だと言われています。その点においては、この記事が参考になると思います。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040709-00001049-mai-int
<沖縄海兵隊>一部、本州移転が望ましい 米太平洋軍司令官


 「迅速な」という点では、海兵隊のような最前線に位置することになる部隊の現場ではまた違った意見があるのかもしれません。


オーストラリアにしてもクレタ島にしても、地図でその国を見ると、まるで片肘をついて横になっているような印象がありますね。
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by Naotaka_Uzawa | 2004-07-09 12:53 | ツキジデス:『歴史』読解
 例えば、今から2000年後の歴史家は、現在の世界をどう見るでしょうか?きっと、現在の世界地図にある細かい国境線は無視するはずです。もっと大まかに勢力圏を分けていくのではないかと思います。

 ツキジデスの歴史を読んでいると、アテナイが支配している島々、イオニア方面、トラキア方面のポリスは、現在の感覚でいうと一応独立したポリスです。しかし、現在の私たちは、この時代の地図をそうは見ません。アテナイとその同盟国、ラケダイモンとその同盟国というように大まかに捉えます。

 よくアメリカの貿易赤字、財政赤字のニュースを見ますが、現在のアメリカを動かしている人たちは、世界の地図を大まかな勢力図で見ているように思います。結局アメリカの勢力圏全体で収支の釣り合いが取れていれば、それでよしという感覚なのかもしれません。それを裏付けているのが強大な軍事力ということになります。

 ツキジデスの歴史では、それはデロス同盟という形で現れています。アテナイはこのデロス同盟を強大化の要素の核心としています。そしてこの同盟はペルシア帝国に対抗することが当初の目的でした。

 その後、アテナイは他のポリスにとって好ましい盟主ではなくなります。デロス同盟から離反しようとするポリスに対して厳しい軍事的制裁が課されるようになります。多分、デロス同盟初期におけるこの離反はペルシア帝国側につくのかという懸念を諸ポリスに与え、アテナイによる制裁は好意的なものとして受け取られたはずです。

 しかし、アテナイの力は、このデロス同盟から上がってくる貢税を基礎にするというか、これを織り込んだものとなっていくので、離反したポリスへの制裁はだんだんと好意的には受け取られることはなくなっていきました。

 現在のアメリカは、アテナイのこのような状況とよく似ていると見ることが出来るのではないかと思っています。
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by Naotaka_Uzawa | 2004-07-04 18:21 | ツキジデス:『歴史』読解
 『歴史』を読んでいて、その全体を流れる雰囲気をどう感じたかを2,3記しておこうと思います。

①力関係(勢力の大きさ、その変化など)を直視している。

明示された理由(現在で言う国際法やその時代に特有・支配的な考え方)と本当の理由(生存や欲望など)を分けて、本当の理由をつかもうとしている。  

②しかし、力の行使には何かしらの「自制」や「慎重さ」が必要。
   
シチリア遠征の失敗や、ペリクレスの影響から生まれているものだと思う。
   
また、自国の存立基盤、人々が納得する限界はどこか、結局は力が大切だがそれでも運不運があり謙虚な姿勢を保つことが必要、というような見方が自制・慎重さを考えるとき重要なポイントだと思う。

③人間についての見方。

ある1つの集団は、常にある事柄において分裂している。
   
人間の欲望(理想も含めて)がたどる経路について、とても冷静な態度で眺めているように感じる。
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by Naotaka_Uzawa | 2004-06-10 01:52 | ツキジデス:『歴史』読解
 アテナイの劣勢が、アテナイ人でさえも実感するようになった時に現われた考え方です。この「後でまた変革すればよい」という考えは、敗戦が濃厚になり国内の統治体系が力で変えられてしまう場合には、常に出てくるものだろうと思います。

 この文脈では、民主制から寡頭制への圧力が強まっている中で、民主制によって恩恵を受けていた人たちが一度は受け入れ、その後また変革すればいいじゃないかという形で現われています。

 また、この時の状況として、前回のように、ペルシアとの関係を良好にするため政体を変えるのが望ましいという考慮が働いています。(ペルシアは王政で少数支配の形を採用しているため)

 民主制→寡頭制の場合、民主制で恩恵を受けていた人たちはその集団における多数派ですが、寡頭制支持者とは違い何か強いつながりがあるわけではありません。ですから、多数派は個別に攻撃を受け、政治的生命を失っていきます(この本の中では暗殺という手法も使われています)。

 国内的には民主制、対外的には他のポリスの民主制支持者を支持しペルシアに対抗することというアテナイ強大化の要因を捨て去ったとき、アテナイは敗れ去りました。

 何が現在の自分たちを作り上げているか?この要因をつかんでおかないと大変なことになるということなのかもしれません。
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by Naotaka_Uzawa | 2004-05-14 13:07 | ツキジデス:『歴史』読解

勢力均衡

 ツキジデスの『歴史』、第8巻では、ペルシア総督ティッサペルネスが登場します。第8巻では、すでにアテナイはシチリア遠征に失敗し、ラケダイモン側が艦船数で優位に立っています。

 重要な点は、ペルシア戦争で敗れはしたものの、ペルシア帝国はエーゲ海方面に依然として影響力を持っていたということです。アテナイの力が落ち、ラケダイモンが戦争を終結させるため以前より積極的に戦争を遂行している中で、双方がペルシア帝国との関係を良好にしようとしています。

 ティッサペルネスは、ペルシア王ダレイオス2世から小アジア方面の統治を任されている地位にあります。そして、イオニア方面からの貢納金を催促されています。イオニアはアテナイが支配していて、ティッサペルネスは徴税することが出来なくなっていました。そこにアテナイがシチリア遠征に失敗し、イオニアの支配を取り戻すチャンスが来ます。

 ティッサペルネスの考え方は、アテナイ、ラケダイモン双方の争いを永続化させ、両勢力を共に衰えさせるというものです。20世紀でいえば、チャーチルのドイツとソ連双方を争わせて共食いさせるという考え方と同じかもしれません。

 ただ、民主制においては、戦争が勃発した場合、同盟を必要に応じてころころと変えるのは至難の技です。民主制では戦争以前の対外的な行動において、この柔軟な姿勢を取っておく必要があるように思います。そして、国内の統治体系を危険にさらさないために戦争は避けたほうがいいというのが、今のところの印象です。

 しかし、国内に住む人々の利益を重視すれば、事態が悪化する前の働きかけは積極的に行うことが必要だと感じます。現在、アメリカでは9.11によって情報機関の影響力が衰えているように見えます。その代わりに、軍が対外的な行動において主導権を握っているように感じます。他国から見ると、どちらも嫌なものですが、アメリカ自身からみると、そして先ほどの考えからすると、軍よりも情報機関が優位に立った状態で、対外政策を考えたほうがいいように思います。

 
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by Naotaka_Uzawa | 2004-05-11 22:56 | ツキジデス:『歴史』読解

地図の見方

 最近、地図が脚光を浴びています。資源、宗教。。。を地図上にグラフで示しているのが特徴だと思います。

 このツキジデスの『歴史』においても、馴染みの薄い地名を懸命になって調べながら読み進めてきました。この時、感じるのはギリシアにおけるペロポンネソス戦争は現在の感覚でいうと非常に限られた空間で行われている戦争ということです。

 この場合、こんな狭い地域で行われた戦争で現在を推し量れるものではないだろうという意見も出てくるのではないかと思いますが、逆にこの地図を自分の持っている世界地図と同じ大きさに拡大して物事を見てみるのも1つの見方だと思うのです。

 なぜなら、この戦争はユーラシア大陸内陸部で行われているものではなく、陸地あり海ありという点で、現在の世界の見方と非常に似ている部分があると思うからです。

古代ギリシア - 地図で読む世界の歴史
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by Naotaka_Uzawa | 2004-05-02 01:55 | ツキジデス:『歴史』読解
 「正義は力の等しい者の間でこそ裁きができるのであって、強者は自らの力を行使し、弱者はそれに譲る、それが人の世の習いというものだ。」

 第5巻のメロス人とアテナイ使節のやりとりのなかで出てくる一節です。解説によるとツキジデスはアテナイの道徳的なものの見方の退廃を批判的に捉えているとの事です。

 ツキジデスは、ペリクレスが活躍していたアテナイの全盛期にその生を受け、ペリクレスのものの見方に親近感を抱いていたと言われています。

 ペリクレスは「冷静を保ち、海軍に意を用いて、戦争中は支配圏の拡大を求めず、ポリスに危険を招かないように」という原則に従ってスパルタ及びその同盟国との戦争に臨みました。しかし、アテナイ人の気質は積極的なものです。メロスでの出来事の後、アテナイはシチリア島全域を支配しようとして失敗し艦隊は全滅します。

 以前、『ネオコンの論理』を読んだときのあの簡潔さはツキジデスが批判的に捉えている見方に似ているものかもしれないと思いました。

 新保守主義者と言われている人たちの、思想的支柱となっている人たちはツキジデス等の古典をよく読み、外交の参考にしていると言われています。彼らがどのようにツキジデスを読んでいるのか、聞いてみたいような気がします。

 現在のアメリカは、「支配圏の拡大を望まず、危険を招かず」という原則を貫き、同盟国民のアメリカに対する求心力を維持する努力がもっと必要だと感じます。

 さて、ツキジデスコーナーをどのようにしていこうか。。。
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by Naotaka_Uzawa | 2004-04-26 22:13 | ツキジデス:『歴史』読解

For Future Reference代表。編集者、ストーリー分析など。執筆に挑戦する方とご一緒に活動しています。ブログでは仕事とは少し離れて大学時代から関心のあった国際情勢や哲学、関連書籍について発信しています。


by Naotaka_Uzawa
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