勢力均衡

 ツキジデスの『歴史』、第8巻では、ペルシア総督ティッサペルネスが登場します。第8巻では、すでにアテナイはシチリア遠征に失敗し、ラケダイモン側が艦船数で優位に立っています。

 重要な点は、ペルシア戦争で敗れはしたものの、ペルシア帝国はエーゲ海方面に依然として影響力を持っていたということです。アテナイの力が落ち、ラケダイモンが戦争を終結させるため以前より積極的に戦争を遂行している中で、双方がペルシア帝国との関係を良好にしようとしています。

 ティッサペルネスは、ペルシア王ダレイオス2世から小アジア方面の統治を任されている地位にあります。そして、イオニア方面からの貢納金を催促されています。イオニアはアテナイが支配していて、ティッサペルネスは徴税することが出来なくなっていました。そこにアテナイがシチリア遠征に失敗し、イオニアの支配を取り戻すチャンスが来ます。

 ティッサペルネスの考え方は、アテナイ、ラケダイモン双方の争いを永続化させ、両勢力を共に衰えさせるというものです。20世紀でいえば、チャーチルのドイツとソ連双方を争わせて共食いさせるという考え方と同じかもしれません。

 ただ、民主制においては、戦争が勃発した場合、同盟を必要に応じてころころと変えるのは至難の技です。民主制では戦争以前の対外的な行動において、この柔軟な姿勢を取っておく必要があるように思います。そして、国内の統治体系を危険にさらさないために戦争は避けたほうがいいというのが、今のところの印象です。

 しかし、国内に住む人々の利益を重視すれば、事態が悪化する前の働きかけは積極的に行うことが必要だと感じます。現在、アメリカでは9.11によって情報機関の影響力が衰えているように見えます。その代わりに、軍が対外的な行動において主導権を握っているように感じます。他国から見ると、どちらも嫌なものですが、アメリカ自身からみると、そして先ほどの考えからすると、軍よりも情報機関が優位に立った状態で、対外政策を考えたほうがいいように思います。

 
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by Naotaka_Uzawa | 2004-05-11 22:56 | ツキジデス:『歴史』読解