戦争と外交 - 表現を変えた交渉
2010年 05月 05日
今日も非常に暑い日でした。午後は、海でボディボード、帰ってきてからはニュースや本を読んで過ごしました。ニュースを読んでいると非常にきな臭い記事が沢山ですね。ご紹介するのは映画ですが、第1次世界大戦に至る緊張をうまく表現しているSF映画があります。時間があったらごらん下さい。とてもポピュラーな映画なので皆さんはもう観ているかもしれませんね。
The League of Extraordinary Gentlemen(IMDb)
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中国船、海保の調査船に接近 日本のEEZ内(2010/5/4)
場所:日本の排他的経済水域内、地理的中間線の日本側40km
出来事:海上保安庁の調査船、昭洋(3千トン)が海底の地殻構造を調査中に、中国政府の調査船、海監51(1700t)に追跡された。
主なやり取り
海監51:「何をしているのか。この海域は中国の規則が適用されるので調査を中止しろ」
昭洋 :「日本の大陸棚であり国際的に正当な調査を実施している」
東シナ海ガス田、日中が初の局長級協議(2010/5/4、読売)
【記事の内容ここまで】
今回は、このガス田を巡る交渉前の軍事的なやり取りに当たると言えるでしょう。このような形での交渉にも関わらず交渉場所が北京というのは良くないと思うのは私だけでしょうか。戦国時代ではないですが、力を背景にした出来事では時代は関係ないように思えます。
最近は、英国において地政学を研究している奥山真司さんのブログを頻繁に見ていますが、とても役立つ記事がたくさん紹介されています。幅広い視点から状況を眺めるという点で、ぜひ参考になさってください。
ごく簡単にまとめると、
ということになるでしょうか。
ここで排他的経済水域についてまとめておきましょう。
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国連海洋法条約
【第55条】排他的経済水域とは、領海に接続する水域・・・沿岸国の権利及び管轄権・・・その他の国の権利及び自由は、この条約・・・によって規定される。
【第56条】
(第1項)沿岸国は、排他的経済水域において、次のものを有する。
【第58条】
(第1項)すべての国は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、排他的経済水域において、この条約の関連する規定に定めるところにより、第87条に定める航行及び上空飛行の自由(公海の自由)・・・を享有する。
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つまり、排他的経済水域の「排他的」には、沿岸国・内陸国の航行・上空飛行の自由まで排除できるものとはなっていません。先ほどの、中国とアメリカとの認識の違いは明らかにアメリカの主張の方が条約に則っていそうですが・・・(中国が日本の沖ノ鳥島EEZに異議、中国海軍の活動[2010/4/13、サーチナ])
今回の出来事は、日本の排他的経済水域内で起き、日本の海洋の科学的調査に関する管轄権に対し、中国政府の調査船、「海監51」が調査の中止を求めてきたというものです。
地図を見ると分かりやすいので、海上保安庁の「日本の領海等概念図」で見てましょう。
日中中間線の日本側での活動について、中国側が「中国の規則が適用される」と主張したので、中国はこの中間線を明確に否定したということになるでしょう。
以前、「中国艦船の演習について」(2010/4/14)という記事で東南アジア諸国と中国の海洋を巡る争いを書いたので是非お読みください。
民主党政権は、駐留米軍に対する対処を完全に間違ったといえるでしょう。その間違いは、日本の主権を危険にさらしています。第2に、対処を誤らなかったとしても日本は厳しい状況に立ちます。私たちが望むような毅然とした政治家が事に当たったとしても非常に長期にわたって厳しいにらみ合いが続くでしょう。
ペリクレスの以下の演説は、駆け引きにおける1つの理想的な形態といえるのではないかと思います。
「些細な問題こそ、諸君の決意を確証し試験する一切のものなのである。もしも諸君が彼らに譲歩すれば、この件で諸君は恐怖に駆られて屈服したのだと彼らは考え、直ちに別の更に大きい要求を諸君に突きつけてくるであろう。しかし諸君が断固として拒否すれば、むしろ対等の立場で諸君と交渉すべきであることを、彼らに明確に示してやることになろう。」(トゥキュディデス『歴史』、一巻140 ペリクレスの演説)
しかし、私たちは自国をアテナイのように捉えてはいけません。ラケダイモンとアテナイに挟まれた非常に裕福な島のひとつとみなす必要があります。同盟国の切り換えは、アメリカとの関係で非常に高くつく代償を払うことになります。同盟を切り替えることなく、自国の防衛努力を高めるバランス感覚が必要です。(ただし、アメリカはアテナイほどの決断力と熱意がある国家ではないと思いますが・・・)
普段、普通に過ごしている人たちも憲法改正と軍備拡張の必要性を考え始めたのではないかと思います。皆さんが(特に私に当てはまりますが・・・)、それぞれの人間関係の中で信頼を失わずにこの問題について話し合い、問題意識を共有できるようになれるよう願います。
The League of Extraordinary Gentlemen(IMDb)
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中国船、海保の調査船に接近 日本のEEZ内(2010/5/4)
場所:日本の排他的経済水域内、地理的中間線の日本側40km
出来事:海上保安庁の調査船、昭洋(3千トン)が海底の地殻構造を調査中に、中国政府の調査船、海監51(1700t)に追跡された。
主なやり取り
海監51:「何をしているのか。この海域は中国の規則が適用されるので調査を中止しろ」
昭洋 :「日本の大陸棚であり国際的に正当な調査を実施している」
東シナ海ガス田、日中が初の局長級協議(2010/5/4、読売)
【記事の内容ここまで】
今回は、このガス田を巡る交渉前の軍事的なやり取りに当たると言えるでしょう。このような形での交渉にも関わらず交渉場所が北京というのは良くないと思うのは私だけでしょうか。戦国時代ではないですが、力を背景にした出来事では時代は関係ないように思えます。
最近は、英国において地政学を研究している奥山真司さんのブログを頻繁に見ていますが、とても役立つ記事がたくさん紹介されています。幅広い視点から状況を眺めるという点で、ぜひ参考になさってください。
- Chinese Military Seeks to Extend Its Naval Power(2010/4/23、NewYork Times)
- The Geography of Chinese Power(2010/4/19、NewYork Times)
(全文はこちら[Foreign Affairs,購入する必要があります]) - China's new strategy(2010/4/26、Foreign Policy)
ごく簡単にまとめると、
- 中国海軍は、沿岸への近接拒否戦略のみならず外洋への展開能力を高めている。
- 排他的経済水域に対するアメリカと中国の認識が異なっている。
ということになるでしょうか。
ここで排他的経済水域についてまとめておきましょう。
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国連海洋法条約
【第55条】排他的経済水域とは、領海に接続する水域・・・沿岸国の権利及び管轄権・・・その他の国の権利及び自由は、この条約・・・によって規定される。
【第56条】
(第1項)沿岸国は、排他的経済水域において、次のものを有する。
- 天然資源の探査、開発、保存及び管理のための主権的権利
- 海水、海流及び風からのエネルギーの生産等の経済的な目的で行なわれる探査及び開発のためのその他の活動に関する主権的権利
- 人工島、施設及び構築物の設置及び利用に関する管轄権
- 海洋の科学的調査に関する管轄権
- 海洋環境の保護及び保全に関する管轄権
【第58条】
(第1項)すべての国は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、排他的経済水域において、この条約の関連する規定に定めるところにより、第87条に定める航行及び上空飛行の自由(公海の自由)・・・を享有する。
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つまり、排他的経済水域の「排他的」には、沿岸国・内陸国の航行・上空飛行の自由まで排除できるものとはなっていません。先ほどの、中国とアメリカとの認識の違いは明らかにアメリカの主張の方が条約に則っていそうですが・・・(中国が日本の沖ノ鳥島EEZに異議、中国海軍の活動[2010/4/13、サーチナ])
今回の出来事は、日本の排他的経済水域内で起き、日本の海洋の科学的調査に関する管轄権に対し、中国政府の調査船、「海監51」が調査の中止を求めてきたというものです。
地図を見ると分かりやすいので、海上保安庁の「日本の領海等概念図」で見てましょう。
日中中間線の日本側での活動について、中国側が「中国の規則が適用される」と主張したので、中国はこの中間線を明確に否定したということになるでしょう。
以前、「中国艦船の演習について」(2010/4/14)という記事で東南アジア諸国と中国の海洋を巡る争いを書いたので是非お読みください。
民主党政権は、駐留米軍に対する対処を完全に間違ったといえるでしょう。その間違いは、日本の主権を危険にさらしています。第2に、対処を誤らなかったとしても日本は厳しい状況に立ちます。私たちが望むような毅然とした政治家が事に当たったとしても非常に長期にわたって厳しいにらみ合いが続くでしょう。
ペリクレスの以下の演説は、駆け引きにおける1つの理想的な形態といえるのではないかと思います。
「些細な問題こそ、諸君の決意を確証し試験する一切のものなのである。もしも諸君が彼らに譲歩すれば、この件で諸君は恐怖に駆られて屈服したのだと彼らは考え、直ちに別の更に大きい要求を諸君に突きつけてくるであろう。しかし諸君が断固として拒否すれば、むしろ対等の立場で諸君と交渉すべきであることを、彼らに明確に示してやることになろう。」(トゥキュディデス『歴史』、一巻140 ペリクレスの演説)
しかし、私たちは自国をアテナイのように捉えてはいけません。ラケダイモンとアテナイに挟まれた非常に裕福な島のひとつとみなす必要があります。同盟国の切り換えは、アメリカとの関係で非常に高くつく代償を払うことになります。同盟を切り替えることなく、自国の防衛努力を高めるバランス感覚が必要です。(ただし、アメリカはアテナイほどの決断力と熱意がある国家ではないと思いますが・・・)
普段、普通に過ごしている人たちも憲法改正と軍備拡張の必要性を考え始めたのではないかと思います。皆さんが(特に私に当てはまりますが・・・)、それぞれの人間関係の中で信頼を失わずにこの問題について話し合い、問題意識を共有できるようになれるよう願います。
by Naotaka_Uzawa
| 2010-05-05 00:16
| 国際情勢