『戦争論』 : 概念上の戦争-限度のない戦争の激しさ

以上のような前提・定義・方向性から、「概念上の戦争」の性質を考えてみよう。敵味方、それぞれの行動は必ず相手に影響を与え連動している。この相互に影響を与え合うことが、戦争の手段、目標とどのように関わっているかが問題だ。

【1.戦争の手段から考える】(1編1章3)
 戦争の手段は物理的な力であり、これを使い暴力を行使することだった。概念上の戦争ではそれ以前の国家間の関係や状態を無視し、すでに戦争が始まっているという前提がある。そのため暴力の行使以外の手段は失われている。戦闘は1度きりであり、お互い抵抗力を完全に奪う能力があるため負ければ完全に無防備状態となる。そのため片方が暴力を行使すればもう片方も暴力で対抗するしかないわけだ。この連鎖は際限もなく続く。戦争の規模・激しさに限度がなくどんどんエスカレートしていくことになる。今戦っている戦争が終結した後、どうなるかを考えることなどしないからだ。


【2.戦争の目標から考える】(1編1章4)
 概念上の戦争の目標は、敵の抵抗力を完全に破壊することだった。そうすれば自分たちの意志を相手に押し付けようとするとき相手は抵抗できないため言うことを聞くしかない。戦争はすでに始まっている。自分たちが敵の抵抗力を完全に破壊しなければ、こちらが負けてしまう。決戦のチャンスは1度しかないからだ。敵も同じように考えている。戦争の規模・激しさに限度がなくどんどんエスカレートしていくことになる。今戦っている戦争が終結した後、どうなるかを考えることなどしないからだ。


【3.敵の抵抗力の測定から考える】(1編1章5)
 今まで戦争の手段・目標と敵味方の行動の連動の関係を見てきた。順番からすると「敵に自分たちの意志を押し付ける」という政治的な目的について考えなければならないように見える。しかし、「概念上の戦争」では、敵の抵抗力を完全に破壊してしまえば敵に自分たちの意志を押し付けることができる。つまり、政治的な目的は戦争が始まった時点で考えなくてもいいことになる。

 それよりも【2】で見た抵抗力についてもう少し詳しく見たほうが「概念上の戦争」を考える上で有効だろう。相手の持つ抵抗力をしっかりと把握できることが前提とされていた。そのため、お互いに敵より優位に立とうと力を発揮する。戦争の規模・激しさに限度がなくどんどんエスカレートしていくことになる。
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by Naotaka_Uzawa | 2010-08-13 23:39 | クラウゼヴィッツ:戦争論読解