『戦争論』:概念上の戦争(1)-前提

 概念上の戦争には、いくつかの前提があるように思われる。ここではその前提を列挙しておく。これらの条件は両軍ともあてはまることとする。現実の戦争を考える場合、これらの条件が否定されていくことになる。

●(1)抽象的なもの同士が戦う (1編1章7節→同節,2編5章で否定)
(2)戦闘力、能力など互いの様々な条件を同じにする (1編2章)
(3)両者とも戦争の完全性(結果について確実なもの)を追い求め、能力もある (1編1章2,6節,2編5章→7節で否定)
(4)相手の持つ抵抗力をしっかりと把握できる (1編1章5節→10,18節は現実の戦争)
●(5)戦争前の状態や様々な関係を無視し、戦争を突然起こることと考える (1編1章6節→7節で否定)
(6)決戦は1回のみ、それにすべての力を使い切る (1編1章6節,3編12章→1編1章8節、3編12章で否定)
●(7)今戦っている戦争が終結した後、どうなるかを考えない (1編1章6節→9節、8編4章で否定,2編5章のモスクワ侵攻の考察を参照)
(8)闘争形式を攻撃のみとする (1編1章12,13,14節→16,17節で防御の考察が始まる)
(9)闘争自体を考え、空間・時間・人間を考慮しない(3編12章)




●(5)(6)(7)はクラウゼヴィッツが箇条書きにして明示しているもの。まだ、他にもいろいろとありそうだ。
●概念上の戦争(言葉)から現実の戦争につなげる思考方法については、3編16章、8編2章にもある。特に8編2章に出てくるナポレオン戦争と「概念上の戦争」の分かりづらい位置づけを整理すれば戦争論の理解もすっきりしたものになるはずだと考えています。
→ただしうまくつなげられるかについては微妙だ
●これらの前提から論理的に戦争の極限の姿が出てくるのかどうか。実は不安がある。今のところはクラウゼヴィッツはこれらの前提から「概念上の戦争」を導き出しているという表面上の理解にとどまっている。
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by Naotaka_Uzawa | 2010-08-10 22:06 | クラウゼヴィッツ:戦争論読解