『アカルナイの人々』(アリストパネス)
ギリシア喜劇。
スパルタがアッティカ(アテネの領域)に侵入したペロポネソス戦争の開戦後、スパルタ王アルキダモスはペリクレスを挑発するためアテネの目と鼻の先にあるアカルナイ区を荒らすのだった。
アルキダモスは、アテナイ人が最盛期にあり若者も多く、さらに前代未聞の軍備を整えているので迎撃に乗り出すだろう……、出てこなければいずれ首都を攻略することもできるはずだと考えていた。
さらに、最大の重装歩兵を供給しているアカルナイ区を荒らし、財産を奪えば、以前ほど防衛に熱心にならないと考えたのである。財産を奪われた以上、守るものはもうないのだから…。
一方、アテナイ人は首都へは近づかないだろうという淡い期待を抱いていたが、アカルナイ区に侵入されるやパニックに陥った。ペルシア戦争から随分と時間が経ち(もう60年ぐらいは経っていた)、戦闘経験や眼前に敵が現れ自国領土が荒らされるのを見たことがなかったからだ。
すべての人(特に若者)は、出撃すべきだと考え、アテナイ人は興奮状態に陥った。彼らの不満は、出撃を抑え込んでいるペリクレスに向けられる。
ペリクレスは、アテナイの最大の武器である艦船で戦うことを決めていた。だから、民会も集会も招集しなかった。招集すればたちまち出撃が決議され、スパルタに敗退し、首都が攻略されるからだ。
ここで、スパルタ王アルキダモスに財産を荒らされたアカルナイ人、酒呑みのディカイオポリスと主戦派のラマコスが登場する。はてさて、2人の顛末はいかに・・・。
当時の現実の状況に、この喜劇作品を投げ込むと、どうも現状認識がズレているのではと感じるようになる……。例えば、「あれ? ペリクレスは出撃を抑えようとしてたよね……」。
上空の高いところと低いところで風が逆向きに吹いていて、一番下で低いところの風を受けている感じだ。この作品だと、高いところ=ペリクレス、低いところ=ラマコス、一番低いところ=ディカイオポリスだろうか。
とするなら、アテネでの上演は、高いところと一番低いところの風が同じ向きだったから好意的に受け入れられた・・・かな。このズレは、いつでも起こっているのでは? ラマコスはペリクレスにとって厄介な存在だっただろう(注:ラマコスは架空のキャラだけど)アカルナイ区の人々のスパルタに対する復讐心はアテネの戦略を破綻させる恐れがあったに違いない。
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by Naotaka_Uzawa
| 2021-02-17 22:00
| ツキジデス:『歴史』読解